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重症鼻炎症状に対する「後鼻神経切断術」

薬では効果が不十分な「鼻みず」「くしゃみ」でお困りの方へ。

高度なアレルギー性鼻炎や、血管運動性鼻炎などでは内服薬・噴霧薬で十分な効果が得られない場合があります。
鼻みずやくしゃみなどの鼻炎症状には鼻の中の神経が関与しており、これを切断することで症状の改善が望めます。
当院では局所麻酔を用いた日帰り手術で「後鼻神経切断術」を行っております。

後鼻神経切断術こうびしんけいせつだんじゅつは、重症なくしゃみ、鼻水を抑えることを目的とした手術です。
アレルギー性鼻炎血管運動性鼻炎などの鼻疾患において
薬で満足いく効果を得られない場合や根治を目指す場合に行われる手術です。

 

後鼻神経は鼻水とくしゃみを制御する神経で左右の鼻に1本ずつあります。
後鼻神経切断術はこの神経を切断することで下鼻甲介からの鼻汁分泌量の減少させ、下鼻甲介の過剰な知覚を抑えます。
これにより「鼻水を減少」「くしゃみや鼻のむずむず感の軽減」が期待できます。

当院では内視鏡を用いた日帰り手術で治療が可能です。
また、粘膜下下鼻甲介骨切除術と組み合わせて行うことが大半です。

当院では副作用に配慮して「選択的後鼻神経切断術」を採用

当院では下鼻甲介に分布する後鼻神経の分枝を選択的に切断する「選択的後鼻神経切断術せんたくてきこうびしんけいせつだんじゅつを採用しています。

後鼻神経は一度切断すると一般的には修復されません。
もともと鼻内を広く支配している後鼻神経の根本を切断すると、鼻の乾燥、萎縮性鼻炎、エンプティノーズ症候群などの副作用が多く生じていました。

当院では下鼻甲介に分布する後鼻神経の分枝のみを切断しております。
下鼻甲介以外に分布する後鼻神経の機能を一部残すことで副作用の予防に配慮しています。

 

後鼻神経切断術の術前に行う検査

内視鏡検査

内視鏡を用いて、鼻腔後方まで粘膜の発赤や浮腫、鼻汁の程度を評価します。

アレルギー検査

くしゃみ、鼻水のコントロールが不良な重症アレルギー性鼻炎に対する治療法のため、
アレルギーの有無の評価が必要になります。

 

後鼻神経切断術はこんな人におすすめ

  • アレルギー性鼻炎
  • 血管運動性鼻炎

などに伴う重度の鼻水、くしゃみでお困りの方

鼻水やくしゃみについて薬で改善しない方

 

手術の流れ

  • 1外来受診
    鼻みずの症状について手術希望をうかがいます。
    また、他院からの紹介状や画像データがある場合は持参ください。
    鼻中隔弯曲症や肥厚性鼻炎の程度がひどい場合は、医師から手術をおすすめする場合もあります。
  • 2薬への反応を評価する
    紹介状がない場合は、まずは鼻みずなどに対する投薬治療を行いその反応性を評価します。
    期間は状況によって異なりますが、最低2週間から1ヶ月程度です。
    投薬治療で効果が不十分である場合に手術の適応となります。
    (他院からの紹介状がある場合は保存治療が無効であることの証明となるため省略が可能です。)
  • 3手術日の決定
    投薬治療で改善がない場合、手術の適応となります。
    この段階で空きのある日程の中から選択いただき手術日を決定します。
  • 4術前検査
    後鼻神経切断術を行う前に各種検査を行い日帰り手術適応について検討します。
    またCTで鼻中隔湾曲症や慢性副鼻腔炎などの合併症があった場合、同時手術をおすすめすることもあります。
    (内科的疾患などがあった場合は入院での手術をおすすめする場合があります。)
  • 5手術当日
    術前点滴、術前処置
    鎮静剤を点滴を行います。
    また術前処置として鼻の中に麻酔液のついたガーゼを挿入し15~20分程度安静にします。
    手術
    手術開始時に局所麻酔をおこないます。
    下鼻甲介の粘膜を切開し、下鼻甲介骨から剥離します。
    下鼻甲介の後方で後鼻神経を同定しこれを切断します。
    切開した粘膜を縫合した後、鼻の中にタンポン(スポンジ)を挿入して手術終了です。
    帰宅
    手術後に約1時間安静にする時間を取り、問題がないことを確認し帰宅となります。
  • 6術後
    3~4日後に鼻内のタンポンを取り除きます。
    その後は週1回程度の経過観察を行います。(傷の治り方によって前後します)
    術後の粘膜はゴミが付きやすくなるので、自宅では鼻洗浄を頻回に行っていただきます。
    切開した傷は1週間程度でくっつき、1ヶ月もすると粘膜は出血しにくい安定した状態になります。
    完全に粘膜が回復するまで3ヶ月程度かかるため、術後の経過観察を継続します。

 

治療効果

後鼻神経切断術を行うことで「くしゃみ・鼻汁」は70%のケースで症状が改善し、
「鼻づまり」に関しては粘膜下下鼻甲介骨切除術を併せて行うことで、90%以上のケースで症状が改善したと報告されています。

 

手術時間

後鼻神経切断術は片側おおよそ20分程度です。
術前の点滴などの処置を含めても1時間前後で終了します。

(下鼻甲介手術や、鼻中隔矯正術など複数の手術を同時にを行う場合は2時間前後かかる場合があります。)

 

後鼻神経切断術の副作用・合併症とリスク

 

術後出血

粘膜を切開したり、骨を一部切除するため術後数日間は少量の出血があります。
タンポンを入れているときは大きな問題になりません。
大量に出血することは大変まれですが、その場合は止血の処置を行う必要が生じる可能性があります。

萎縮性鼻炎

後鼻神経を切断することにより下鼻甲介の機能(鼻汁分泌、知覚)が低下します。
これに伴い術後長期間経過すると下鼻甲介が萎縮する萎縮性鼻炎に移行する場合があるとの報告があります。

当院では下鼻甲介を支配する後鼻神経を選択的に切断する術式(粘膜下下鼻甲介骨後鼻神経合併切除術ねんまくかかびこうかいこつこうびしんけいがっぺいせつじょじゅつを採用しています。
下鼻甲介の機能を一部残すことで萎縮性鼻炎、エンプティノーズ症候群が起きにくい術式で行っております。

 

手術費用

手術名:後鼻神経切断術(K344 経鼻腔的翼突管神経切除術)

 

保険点数 30,460点
自己負担額 91,380円(3割負担)

 

(これに加えて再診料、処方料などがかかります。)

他に鼻閉の原因疾患が併発していた場合

 

鼻づまりでお困りの方は

  • 肥厚性鼻炎
  • 鼻中隔湾曲症
  • 鼻茸、鼻ポリープ
  • 慢性副鼻腔炎

などの鼻の疾患を併発している場合があります。

その場合は同時にそれらの手術を施行することも可能です。

これらの手術の適応についても判断しますので、一度受診ください。

 

高額療養費制度について

手術総額が一定額を上回った場合、「高額療養費制度」もご利用できます。

高額療養費とは、1ヶ月単位で定められた医療費以上の自己負担が免除される制度です。

ある1ヶ月の間にかかった医療費の自己負担額が高額になった際に、一定の金額を超えた分が、あとで払い戻されます
手術をおこなう場合には医療費が高額になりがちなため、この高額療養費制度をご紹介しております。

加入する健康保険組合に事前に手続きを行うと「限度額適用認定証」が発行されます。
この認定証を事前に申請し、手術の日にご提示いただくと負担額が軽くなります。

加入している保険(国民健康保険、健康保険、船員保険、共済組合、後期高齢者医療制度)や、年収により条件が異なります。
詳しくは加入している保険にお問合せください。

※事前に「限度額適用認定証」交付を受けなかった場合は、
手術を受けた月の翌月の初日から2年以内に手続きすれば適用されます。

 

医療保険組合独自の付加給付制度について

高額療養費制度以外に保険組合独自の「付加給付」として、
上記の高額医療費の額よりも低い自己負担限度額を設定している組合もあります。
詳細につきましては、ご自身が加入する保険組合にお問い合わせください 。

*手術費用以外に術前の検査料、再診料、術後の薬剤料等が加わります。