睡眠時無呼吸症候群(SAS) とは
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まったり,浅くなったりすることで体の低酸素状態が発生する病気です.
夜間の睡眠の質が下がるため、日中の眠気が強くなったり集中力が低下するなどパフォーマンスが低下してしまいます。
ただの眠気と考えられがちですが、
2003年の新幹線の事故や2018年の高速バスの居眠り事故といった重大な事故を招く可能性がある注意が必要な疾患です。
そのため適切な治療を受けて症状を改善することが大切であるといえます。
睡眠時無呼吸症候群の危険性
心血管リスクの上昇
睡眠時に無呼吸な時間があると心臓や血管に大きな負担がかかります。
このことから血圧と睡眠時無呼吸症候群には強い関連があります。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんの50%に高血圧が認められます。
反対にに高血圧の患者さんの30%に睡眠時無呼吸症候群が認められるという報告があります。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは心不全、不整脈、狭心症、心筋梗塞や脳卒中のといった
心血管リスクが2倍~4倍に高まると言われています。
重症睡眠時無呼吸では10年以内の死亡率が上昇
さらに重篤な睡眠時無呼吸症候群を治療せずに放置していると、
8年後の死亡率は約37%であるという研究結果も報告されています。
睡眠時無呼吸症候群の診断
10秒以上呼吸(気流)が止まってしまうことを無呼吸といいます。
睡眠時に無呼吸が
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- 1時間に5回以上
- 7時間の睡眠中に30回以上
あるものを睡眠時無呼吸症候群といいます。
治療方法
睡眠時無呼吸症候群の治療には大きく分けて4種類あります
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- 持続陽圧呼吸療法(CPAP治療)
- マウスピース作成
- 手術
- 生活習慣の改善
この中で特に効果の高いCPAPをご紹介します。
持続陽圧呼吸療法「CPAP」とは
CPAPは鼻に装着したマスクから送り込んだ空気の圧力で空気の通り道を確保する治療です。
睡眠時無呼吸症候群忍耐してもっとも効果のある治療法です。
患者さんに適した空気圧を設定することで、
睡眠中に気道塞がれるのを防ぎ、呼吸がスムーズにできるようになります。
CPAPの効果
日中の眠気などの症状を改善し生活の質が上がります。
睡眠中の無呼吸やいびきが軽減し、しっかりと眠れるようになるため昼間の眠気や疲労感などの症状が改善します。
また、高血圧など生活習慣病のコントロール、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気に直結する動脈硬化の進行を予防することで
数年後の心血管リスクを下げることができます。
いびきの音が小さくなると同居する家族の睡眠の質も改善することが期待できます。
CPAPをおすすめする方
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- 日中集中しなければならない場で睡魔に襲われてしまう方
- 読書中やテレビを見ているときに眠くなってしまう方
- 車に乗っているときに眠くなってしまう方
- 周囲の人からいびきを指摘されている方
- 夜間の睡眠中によく目が覚めてしまう方
- 息苦しくなって起きてしまう方
- 起床時の頭痛や体のだるさがある方
CPAPの開始までの流れ
① 耳鼻科診察
いびきや日中の眠気などの日頃の睡眠の悩みに関する問診を行い、
いびきの原因となる鼻や喉の疾患や「がん」などの腫瘍性病変がないかを耳鼻科用の細い内視鏡を用いて検査を行います。
② 夜間の睡眠検査
簡易睡眠時呼吸検知装置;アプノモニタを用いてスクリーニング検査します。
アプノモニタは夜間の呼吸状態を評価するための検査装置です。
睡眠中に鼻、指、胸部にセンサーをつけることで、呼吸停止の有無、血中の酸素濃度などを測定します。
検査機器は宅配便で自宅に送られますので、自宅で寝る前に付属の動画を見ながら装着いただきます。
*検査が終わりましたら、速やかに返送頂きます。
③ 結果説明とCPAP適応の判断
約10日程度で検査結果の解析が終了します。
検査結果が出た後、診察を行い結果の説明を行います。
この検査結果から重症度を判定し、CPAPの適応を判断します。
④ CPAPの送付と開始
CPAP開始となった場合には、CPAPの業者より機械が送付されますので、到着次第速やかに使用を開始して頂きます。
厚生労働省に決められた診察の頻度で、使用頻度・時間やリーク(空気の漏れ)のフィードバックを行います。
なかなかうまく継続できない場合は、できるだけ長く効果的に装着できるようにドバイスをさせていただきます。
*検査結果によっては、精密検査のために専門病院を紹介させて頂く場合があります。
精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査;PSG)が必要となった場合
簡易検査で重症の睡眠時無呼吸症候群に当たらなかった方は精密検査の適応となる場合があります。
簡易検査で「重症」の判定が出ればCPAP開始となりますが、重症に満たない方は適応の判断ができません。
「重症」に満たない方でも寝る姿勢によっては無呼吸指数が高かったり、
CPAP導入で睡眠の質が向上する中等度の睡眠時無呼吸症候群の方もいらっしゃいます。
精密検査である終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)では脳波、筋電図、心電図、呼吸、血液中の酸素飽和度などをより多くの情報を測定しアプノモニタに比べてより正確なSASの評価を行うことができます。
従来は精密検査には1泊2日の検査入院が必要でしたが、
当院では簡易検査と同じように自宅で行っていただける精密検査機器を導入しております。
精密検査が自宅で行えるメリット
- 普段と同じ環境で検査ができるので実態を把握しやすい
- 入院費用がかからない分、検査費用がリーズナブル
検査入院をする時間が取れない方でも正確な評価をすることができ、CPAPの必要性を評価する事ができます。
通院の頻度
CPAPの使用状況と使用感を確認するため、通常1ヶ月に1回診察を行います。
マスクを付けたまま呼吸するのは違和感が強く、治療開始当初皆様上手に使えません。
使用状態を見つつ、患者様個人個人に合わせてできるだけ長く装着できるようなアドバイスをさせていただいております。
この際にアレルギー性鼻炎による鼻づまりなどといった
睡眠時無呼吸症候群の悪化する原因となる症状があればその都度治療を行います。
治療期間が長く、安定して装着できている方については2ヶ月に1回など厚生労働省が定める範囲内で受診間隔を延長する場合もございます。
CPAPの費用
睡眠時無呼吸症候群の検査と治療には、健康保険が適用されます。
検査
簡易検査:約2,700円 (3割負担)
精密検査:約11,300円 (3割負担)
治療
CPAP治療:毎月 約4,500円 程度 (3割負担)